リ窓

October 08102011

 木犀や木の中はまだ雨が降る

                           八木荘一

が家の朝の窓に金木犀の香りがしたのは、今年は十月一日。植え替えた庭の木は残念ながら昨年同様花をつけないのだが、ご近所のそこここから香ってくる。一雨で、開花して香ることも香りごと散ってしまうこともあるが、ぐっと冷えこんだ雨の中、これを書いている今日もまだよく香っている。先日、どんよりとした空模様の中出かけた庭園に、それはりっぱな金木犀の一樹があった。少し湿った香りを放つその樹に近づいた時急に日差しが広がって、それまでとは違う明るい木犀の風に包まれた。日の中で輝く花とどこか濡れている幹と香り。雨を抱いたまま、やがて木犀も散ってしまう。『季寄せ 草木花』(1981・朝日新聞社)所載。(今井肖子)




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