保安院が5年以上も原発検査官の欠員を放置していた(東京新聞)。(哲




2011N1116句(前日までの二句を含む)

November 16112011

 満月を浴びて少年探偵団

                           嵐山光三郎

ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団/勇気りんりん瑠璃の色……この主題歌は今でも耳にしっかり残っていて、歌えば年甲斐もなく心がワクワクドキドキしてくる。映画化され、テレビでも連続放映された、言わずと知れた江戸川乱歩作「怪人二十面相」。名探偵明智小五郎を補佐する小林少年を団長とする「少年探偵団」の登場である。同世代の光三郎も、きっとワクワクしながらこの句を作ったにちがいない。「ぼ、ぼ、ぼくら……」の"bo"音の吃るように連続する響きに他愛もなく、それこそ「ぼ、ぼ、ぼくら」はかつてたやすく電波に攫われてしまっていた。それに「りんりん瑠璃の色」と"r"音が連続する。しかも外は満月。「ぼ、ぼ、ぼくら」の連続音に誘われるように、夜空に高く満月は昇ってくる。そして満月に怪しい姿を暗躍させる怪人二十面相が、見えてきそうではないか。今夜もこれから事件が起きて、少年探偵団が活躍することになりそうな予感がする。こちらの気持ちも若返って胸が高鳴ってくる。掲句は光三郎が中学三年生のとき、ガリ版刷りの文芸誌に発表したものだという。いかにも少年らしい明るさがある。ほかに光三郎句「あまぎ嶺に谺し冬の鳥射たる」がある。「俳句界」(2011年11月号)収載。(八木忠栄)


November 15112011

 ほどけゆく手紙の中の焚火かな

                           西原天気

火には炎の色と心地よい火の爆ぜる音が重なり、どこか湧き立つ思いになるものだ。なにもかも燃やしておしまい、という豪快な気持ちも焚火の本意だろう。しかし、掲句は焚火のなかの手紙に注目している。手紙だけをまとめて焼いているのか、その他のものと同時に焼いているなかで手紙をクローズアップしているのか。どちらにしても木片と違い、紙が燃えるときに音は出ない。しずしずと縮まりながら炭化していく。掲句は「ほどけゆく」としたことで、封筒から手紙へと火が移り、ひもといていくような時間があらわれている。炎は束になった紙をほどき、文章はばらばらの文字の集まりとなり、そしてひと文字ひと文字をしずかに浸食していく。ついさっきまで文字だった煙が、冬の空へと吸い込まれていく。『けむり』(2011)所収。(土肥あき子)


November 14112011

 天気地気こぼれそめたる実むらさき

                           池田澄子

ややかで可憐な「実むらさき」がこぼれて落ちる季節になった。「実むらさき」は紫式部の実。この情景を感傷に流すのはたやすいし、そういう句も多いけれど、この句は別の感動に私たちを連れて行く。作者は瞬間的に「実むらさき」がいまの姿になるまでの過程に思いを致して、この姿になるまでに「天気地気」、すなわち「天と地の気」が働きかけたもろもろの力の結果であることを感じている。ちっちゃな「実むらさき」にだって、ちゃんと宇宙的な力が働いていることに、あらためて魅惑されているのだ。などと解釈すると、理屈のかった句と誤解されそうだが、それを救っているのが「こぼれそめたる」という意識的な歌謡調の言葉遣いだろう。このことによって、句の情景はあくまでも自然の姿をそのまま素朴にとどめており、なおかつ宇宙的物理的な力の存在への思いを理屈抜きに開いてくれている。新しい抒情世界への出発が告げられている句と読んだ。俳誌「豈」(52号・2011)所載。(清水哲男)




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