東京地方も朝夕は手が少しかじかむほどの寒さになってきました。(哲




2011ソスN11ソスソス17ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 17112011

 三代の女系家族が菊燃やす

                           蔵前幸子

系は女の系統、母方の血統と辞書にある。卷族の男性の影が薄く女中心に物事が決定される家なども女系家族と呼ばれることもあるようだ。掲句のシーンは祖母、母、娘がぐるりと火を囲んで枯菊を燃やしているのだろう。ただ、枯れた菊ではなく単に菊を燃やすと書かれているので、乱れ咲いている菊をそのままくべているようで生々しい。菊は延命長寿、邪気払いの薬効のある花でその菊を燃やす様子がまじないをしているようで怖い。これが祖父、父、息子の組み合わせだとまた様子が変わってくるだろう。三代は三人にも通じ、マクベスの魔女も思わせて、枯れ菊を焚く光景が怪しい雰囲気を醸し出している。『さっちゃん』(2009)所収。(三宅やよい)


November 16112011

 満月を浴びて少年探偵団

                           嵐山光三郎

ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団/勇気りんりん瑠璃の色……この主題歌は今でも耳にしっかり残っていて、歌えば年甲斐もなく心がワクワクドキドキしてくる。映画化され、テレビでも連続放映された、言わずと知れた江戸川乱歩作「怪人二十面相」。名探偵明智小五郎を補佐する小林少年を団長とする「少年探偵団」の登場である。同世代の光三郎も、きっとワクワクしながらこの句を作ったにちがいない。「ぼ、ぼ、ぼくら……」の"bo"音の吃るように連続する響きに他愛もなく、それこそ「ぼ、ぼ、ぼくら」はかつてたやすく電波に攫われてしまっていた。それに「りんりん瑠璃の色」と"r"音が連続する。しかも外は満月。「ぼ、ぼ、ぼくら」の連続音に誘われるように、夜空に高く満月は昇ってくる。そして満月に怪しい姿を暗躍させる怪人二十面相が、見えてきそうではないか。今夜もこれから事件が起きて、少年探偵団が活躍することになりそうな予感がする。こちらの気持ちも若返って胸が高鳴ってくる。掲句は光三郎が中学三年生のとき、ガリ版刷りの文芸誌に発表したものだという。いかにも少年らしい明るさがある。ほかに光三郎句「あまぎ嶺に谺し冬の鳥射たる」がある。「俳句界」(2011年11月号)収載。(八木忠栄)


November 15112011

 ほどけゆく手紙の中の焚火かな

                           西原天気

火には炎の色と心地よい火の爆ぜる音が重なり、どこか湧き立つ思いになるものだ。なにもかも燃やしておしまい、という豪快な気持ちも焚火の本意だろう。しかし、掲句は焚火のなかの手紙に注目している。手紙だけをまとめて焼いているのか、その他のものと同時に焼いているなかで手紙をクローズアップしているのか。どちらにしても木片と違い、紙が燃えるときに音は出ない。しずしずと縮まりながら炭化していく。掲句は「ほどけゆく」としたことで、封筒から手紙へと火が移り、ひもといていくような時間があらわれている。炎は束になった紙をほどき、文章はばらばらの文字の集まりとなり、そしてひと文字ひと文字をしずかに浸食していく。ついさっきまで文字だった煙が、冬の空へと吸い込まれていく。『けむり』(2011)所収。(土肥あき子)




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