November 252011
板橋の日向に落葉籠を置く
島田刀根夫
板橋の日向。板橋は東京都板橋区の板橋か。だとすると作者はこの地名にどういう思いを凝らしたのか。板橋が板の橋である可能性もある。波多野爽波門という視角的な描写を重視する作り方を考えればこちらの方が作者の意図かもしれない。板の橋は板橋というふうに言えるのか。竹の橋は竹橋。土の橋は土橋。石の橋は石橋か。しばらく二つのヨミを巡らせた上で後者に軍配が傾く。この行司サバキ自体が僕の嗜好を反映している。その地の風土的実体が希薄なのに言葉の効果だけを狙って地名を用いた句を僕は好まないのだ。小さな幅の流れに板の橋が渡してある。そんな短い橋にも日向と日陰があり、その日向の部分に落葉籠が置かれている。細部に目を凝らしたしずかな風景だ。アメリカの画家アンドリュー・ワイエスの絵のように。『青春』(2007)所収。(今井 聖)
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