December 132011
死ににゆく木偶の髪結ふ雪催
渡 たみ
木偶とは、人形浄瑠璃で使用する木彫りの操り人形のことである。動く人形を見世物としたのは平安時代より見られ、時代とともに目や口、五指が動くからくりによって、より人間に近いなめらかな動きを可能にした。農村各地まであまねく小屋が隆盛し、江戸中期には歌舞伎を圧倒するほどの人気を得たという。以前見た木偶人形は20条以上の糸に操ることよって人間の動作を再現していた。それは人間の骨や筋肉を代行しているかのような緻密さである。掲句では、今は単なる人形の頭であるものが、舞台に出れば嘆き悲しむ人そのものとなって、死ぬ運命が待っている。あれほど繊細な動きをするものに魂が入らないわけがない。あまりに人間らしく作られた人形たちが、なぜか不憫に思えて仕方がないのだ。『安宅』(2008)所収。(土肥あき子)
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