January 032012
どの星も棘あるごとし寒波来る
岡崎 伸
寒さが厳しければ厳しいほど、夜空は引き締まり、月や星は輝きを増す。とはいえ、同じ天体でも絵に描く場合には、太陽には本体の円形を囲む線によって温みや光彩を表し、月は本体のみが描かれる。そして、星だけに輝きの尖りが付く。パソコンで「星」と打って変換される「☆」にも5方向に輝きが放射される。星は輝くものの代名詞として使われ、その輝きはまたたいて見えることからより強調されるのだろう。科学的に説明すれば、星のまたたきは大気の揺らぎによるものだというが、大小の星が点滅しながら灯る夜空はいかにも美しい。掲句は寒波を背負っている夜空であり、より透徹な空気を感じさせる。輝きを棘と表現することによって、星に美しさだけではなく過酷な冬季であることも言外に含む鋭利な表情も刻まれた。〈遠眼鏡百ほどそらふ初鴨に〉〈猫すこし横へずらして日向ぼこ〉『遠眼鏡』(2011)所収。(土肥あき子)
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