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February 0122012

 夜の雪わらじもぬがで子を思ふ

                           勝 海舟

の降る夜に外出から海舟は帰って来た。離れて暮らす吾子のことをふと思い出し、「しばらく会っていないが、この雪のなかでどうしているだろう?」と、わらじを脱いであがるのも忘れて、そのまま玄関で、しばし吾子のことをあれこれ気にかけている。子を思う親の心である。あるいは、もしかすると吾子のところから今帰って来たばかりで、何かしらフッと気にかかっている、ということなのかもしれない。「わらじもぬがで」だから、よほど強く気にかかることがあったものと思われる。雪降る夜の静けさが、吾子のことをいつになく思い出させてしまったのだろう。親は幾つになっても、何につけ子のことを思うものである。海舟は「政治家や医者とちがって、俳諧は金を捨てて楽しむからいい」と語ったことがあると言われている。俳諧とは本来そういうものだったはずであろう。他に「梅盛り枝は横たて十文字」がある。高橋康雄『風雅のひとびと』(1999)所載。(八木忠栄)




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