February 092012
ヒヤシンスしあわせがどうしても要る
福田若之
ヒヤシンスは早春を代表する花。どこか冷たい感じがするのは名前の語感と色と水栽培で育てた経験によるのだろうか。忙しい毎日に心追われる身に「しあわせがどうしても要る」というひたむきなフレーズが痛く感じられる。ひらがなで書かれた「しあわせ」の淡さと対照的に「どうしても」という頑是無い物言いが、格言的フレーズに陥る危険からこの句を掬っている。ヒヤシンスはいくつかある花の候補から恣意的に選ばれた印象だが、下五に置くと語調良く流れすぎるが、上五にあると紫色の小花を集めて凛と直立するヒヤシンスがまずイメージとして浮かび、あとの呟きが自然に滑りだしてゆく。「かもめの両翼あたたかく空に在る」「甲板の風がくすぐったい春だ」みずみずしい感覚が素敵な91年生まれの俳人である。『俳コレ』(2011)所載。(三宅やよい)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|