午後第99回余白句会。兼題は「春の宵」「詩人(要季語)」です。(哲




2012N218句(前日までの二句を含む)

February 1822012

 小さくて大きなバレンタインチョコ

                           山本素竹

ョコレートで埋め尽くされていたデパ地下も、やっと平常の落ち着きを取り戻してやれやれ、といったところ。作者は筆者とほぼ同世代なので、現在のバレンタインデー事情とはだいぶ異なっていたのだろうと分かる。義理チョコ、友チョコ、自分チョコ、など少なくとも私の記憶にはない。好きな人にひとつだけ買って渡した覚えはあり、友人が学校では恥ずかしくて渡せず、それでも今日中に渡したいからつき合って、と言われて住所片手にうろうろ家を探した思い出も。携帯電話の無かった昭和四十年代の話だ。そんなあれこれをひょいと思い出させてくれたこの句、単純な言葉の対比が心の中で大きくふくらんで、ほのぼのしつつ、俳句ならではの表現と思う。『百句』(2002)所収。(今井肖子)


February 1722012

 一草も眠らず朧月夜なり

                           島田葉月

の夜の万象萌え出づるがごときざわめきが聞こえてくる。一草も眠ることがない。これは躁の句だ。ハイテンションそのもの。眠らなくても良ければ人生は二倍生きられる。不夜城という言葉もある。春宵一刻値千金、だから眠らずにいようよという句。不眠不休じゃいやだけど。『闇は青より』(2012)所収。(今井 聖)


February 1622012

 いのうえの気配なくなり猫の恋

                           岡村知昭

だまだ寒いのに猫はとっくに春の訪れを感じ取っているようである。先週ぐらいからあちこちでウンニャー、フニャーと奇怪な鳴き声が聞こえる。それにしても「いのうえ」って誰?なぜひらかなで書かれているのだろう「いのうえ」を手掛かりに句に背景を探そうとしても詮方ない。「お好きにどうぞ」と言った抛りだし方である。それだけに、顔の見えない人物が気になってくる。「いのうえ」は猫にとって警戒を要する人間であるらしい。大事な飼猫に浮かれ猫が近付かないよう監視しているのか、サカリのついた猫を見ると棒を振りあげる危険な人物なのか、ともかくも「いのうえ」の気配がなくなった路地を、塀を猫は小走りに駆け抜け、夜通し鳴き続けることだろう。『俳コレ』(2011)所載。(三宅やよい)




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