March 022012
春の口紅三越の紙の色
須川洋子
明快な配色。単純化されたものの配合。須川さんは楸邨門の中では数少ない「もの」派だった。「遠足の列大丸の中とほる」の田川飛旅子さんをひとつのお手本に学んだ。「寒雷」のような観念派の中の「もの」派は花鳥諷詠派がいう「もの」とはかなり違う。ほんとうに「もの」なのだ。神社仏閣老病死や季語の本意に依った「もの」ではなくて情緒をあらかじめ設定しない純粋な「もの」。そこらへんに転がっているあらゆる物象を対象とするのだ。周囲の圧倒的な数の「観念」派に抵抗する中で鍛えられた尖鋭的な「もの」派だ。須川さんが逝ってしまった。(「季刊芙蓉」2012・春・第91号)所載。(今井 聖)
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