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March 0632012

 きつぱりとせぬゆゑ春の雲といふ

                           鈴木貞雄

週は首都圏でも雪が降り、翌日は15度という落ち着かなさも春恒例のことではあるが、年々身体が追いつかなくなる。夏の厳しさも、冬の寒さもさることながら、かつてもっとも過ごしやすいと思っていた春が、一定しない陽気やら花粉やらでもっとも厭わしい季節になっていることにわれながら驚いている。正岡子規が「春雲は絮(わた)の如く」と称したように、春の雲は太い刷毛でそっと刷いたように、あるいはふわふわとしたまろやかさで身軽に空に浮かぶ。見つめていれば半透明になり、端から青空と一体化してしまうような頼りなさに思わず、「雲は雲らしく、もりもりっとせんかい」と檄を飛ばしたくなる心があってこそ、掲句が成り立つのだと思う。青春時代にはおそらく出てこない感情だろう。とはいえ、これこそ春の雲。春の空がうっとりとやわらかくかすんでいるのは、溶け出した雲のかけらを存分に吸い込んでいるからだろう。『森の句集』(2012)所収。(土肥あき子)


June 1162013

 洗はれて馬の鼻梁の星涼し

                           鈴木貞雄

は栗毛や葦毛などの毛色とともに、顔や脚にある白斑が大きな特徴になる。額にある白斑を「星」と呼び、額から鼻先へ流れるそれを「流星」と呼ぶのは、いかにも颯爽とした馬に似つかわしい美しい名称である。乗馬を終えた馬は思いのほか汗をかいており、夏はクールダウンのため水をかけることもある。鞍を外し、水を浴び、全身を拭いてもらった馬は誰が見ても「あー、気持ちよかった」という表情をする。長い年月人間と関わってきた動物には、言葉はなくとも意思をやりとりできる術を心得ているのだろう。あるじの手入れの労に応えるように、洗い立てのつやつやした四肢を輝かせ、頭をぶるんとひと振りすれば、額の星がひときわ白く映える。それはまるで夏空にきらめく涼やかな星のように。〈てのひらに叩き木の芽を覚ましけり〉〈二番子にやや窶れたる燕の巣〉『墨水』(2013)所収。(土肥あき子)




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