March 102012
燃やすべき今日の心や椿燃ゆ
上野 泰
散らずに落ちることを詠まれ続ける椿だけれど、この句の椿はあかあかと燃えている。燃えるような赤い花、というともっと明るいイメージだが、深い緑の葉陰に一輪ずつのぞく椿の赤にはまた、独特の表情がある。燃やすべき、と詠んだこの時五十一歳の作者、椿のひたすらな赤にかきたてられるように何を思ったのだろうか。今日は三月十日、ちょうど一年が過ぎる。今こうして、いつ何が起こるかわからず、明日が来るのかさえ不確かな日々の中に暮らしていると、燃やすべき今日の心、という言葉がより一層切実に迫って来る。『城』(1974)所収。(今井肖子)
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