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April 2242012

 雁帰る沖にしづめる剣いくつ

                           木津直人

句は、俳句という短い形式のなかに現在と古代をダイナミックに振幅させています。「雁帰る」が季語で、秋に寒地より越冬にやって来た雁が春に帰る情景を、作者は現在の視点で見ています。見続けているうちに、沖の水平線の彼方に雁が消えていきます。それは沖に沈んでいくようにも見えながら、作者の想念のなかで、海底の剣になっていったのではないでしょうか。雁の形と剣の形は似ていますから、心地よい飛躍です。ここで句は、現在の雁から古代の剣へと大きく振幅します。「雁」と「剣」は対照的で、それは、空の彼方と海の底、見えているものと見えていないもの、自然の営みと人の戦いの歴史、というように大きな隔たりがあります。この対照的な「雁 」と「剣」を句のなかでつなぎとめているのが「沖」でしょう。「沖」は、「雁帰る沖」でもあり、「沖にしづめる剣」でもあり、「沖」が空と海底を空間的につなぎとめている蝶番(ちょうつがい)のはたらきを担っています。最後は「いくつ」と疑問で終わり、古代から現在へと振幅が戻ります。問いかけは少年が持つ謎や憧れや好奇心に近く、沖に古代を夢想する詩情を感じます。作者は詩人で、詩集に『単位』(七月堂)『記憶祭』(私家版)があります。「ににん」(2012年春号)所載。(小笠原高志)




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