June 182012
女にも七人の敵花ユッカ
近江満里子
江 戸時代からの諺に曰く、「男は閾を跨げば七人の敵あり」。男が社会に出て大人として活動すれば、常に多くの敵ができるものであるという意だが、作者は「女」も同様ですよと言っている。昔の人が読んだらびっくりするだろうが、いまの私たちには「さもありなん」と違和感は覚えない。世の中は、すっかり変わってしまったのだ。では、何故「花ユッカ」との取り合わせなのだろうか。間違っているかもしれないが、私は作者の持つ女性観のひとつだと解釈した。美人をたとえて「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」と言うが、これと同じことだ。つまり女には「花ユッカ」みたいなところがあるというわけである。公園などに植えられるこの花は、まことにおだやかな感じの白くて大きい花房を高くかかげる。だが、写真でお分かりのように、下の葉は剣先のような鋭い形状をしており、おだやかな花の雰囲気とは似ても似つかない。英名では「スペインの小刀」と言うくらいで、不気味なたたずまいである。しかもこの花は初夏と秋の二度咲きで、なかには越年して咲きつづけるものもあるそうな。女の敵の女は、かくのごとくにしつこくて執念深いというわけだ。なんだか、男の七人の敵のほうが可愛らしくヤワに思えてくる。『微熱のにほひ』(2012)所収。(清水哲男)
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