July 262012
音楽で食べようなんて思うな蚊
岡野泰輔
グループサウンズ、フォークの時代から音楽はいつだって若者の憧れだ。手始めにギターを買って、コードを覚えれば次にはバンド仲間を募ってレンタルスタジオで音合わせ、次にはライブハウスで、と夢はどんどん膨らんでゆく。学生時代は大目に見ていた親も就職を渋っている子供に「実は音楽で食べていきたいんだけど」なんて告げられると、即座に「音楽で食べようなんて思うな」と言ってしまいそうだ。かっての自分に身に覚えあることだって、子供だと別だ。世間はそう甘くない。お決まりの親の台詞に「蚊」?渋面の父の額にブーンと飛んできた蚊が止まる。それを「あ、蚊」とぺちんと打つその間合いが面白い。文脈から言えば、「音楽で食べようと思うな、喝!」となりそうなところを「蚊」と外すところに妙味がある。『俳コレ』(2011)所載。(三宅やよい)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|