September 142012
滝の上深作欣二の叫び声
秋山巳之流
作者は人の名前を詠みこんだ挨拶句を多く作った。俳句の本質は挨拶にありと思っていたのかもしれない。俳句は個人的なものだと思っていたのかもしれない。多くの挨拶句の中で僕はこの句が好きだ。深作は映画「仁義なき戦い」、「バトル・ロワイヤル」の監督。前立腺癌がわかったとき性機能が失われると言われて手術を拒否した人。ブルーハーツが好きで葬儀で「1001のバイオリン」を流すようにと遺言した人。その人が滝の上で何か叫んでいる。滝の轟音と重なって何を叫んでいるのかわからないような絶叫のイメージだ。そういえば巳之流さんも同じ時期、癌との闘病中だったのだ。『秋山巳之流全句集』(2012)所収。(今井 聖)
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