September 182012
秋耕の人折り返すとき光る
林昭太郎
ゴッホの「種まく人」は、ミレーの代表作「種まく人」とほぼ同じ構図で描かれる。ゴッホは「ミレーが残した『種まく人』には残念ながら色彩がない。僕は大きな画面に色彩で種まく人を描こうと思っている」と手紙に記した。そして、彼は地平線へと沈む太陽を強烈な原色で描いたのだった。ミレーの落ち着いた色彩もよいが、農夫の背負う輝きをどうしても描きたかったゴッホの気持ちもよく分かる。土と会話し、育て、収穫する。たとえ真実の晴天のなかにあったとしても、彼らがまとう光は特別なものとして、見ている者の目には映る。耕す人の元に鳥たちが集まるのは、土を掘り返すことで地中から飛び出してくる蛙を狙っているのだという。やわらかい光のなかで、さまざまな命のやりとりが静かに続いている。〈かなかなや水の慄へる金盥〉〈爽涼や風の器となる破船〉『あまねく』(2012)所収。(土肥あき子)
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