どんな功名心でもそうだが、学者のそれには特に哀しいものがある。(哲




2012ソスN10ソスソス14ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

October 14102012

 塩田はすたれあつけし草残る

                           酒井黙禅

沿いの土地を旅すると、よくご当地の土産物屋があります。土産としては手頃だし、料理の決め手は塩にありと思っているので、買い求めます。オホーツクの塩、三陸の塩、伊豆の塩、高知の塩、沖縄の塩、それぞれに味や粒の形・大きさ・湿り気など違いがありますが、産地の「塩田」にお目にかかれることはなくなりました。私は塩田を見たことがありません。製塩技術も進歩を遂げて、塩田という素朴な方法はほとんどなくなってしまっているのでしょう。掲句のように、塩田はすたれてしまいました。その塩田に残る「あつけし草」とは「厚岸草」で、厚岸(あっけし)は北海道東部太平洋側、根室と釧路の中間に位置し、最初にこの地で発見されたことにちなんで命名されています。厚岸草は、北海道・本州北部・四国の塩分の多い海岸の湿地などにごくまれに群生し、高さ10〜30センチ。形状は、遠目からは唐辛子に似ていて、夏の間濃い緑色なのが、秋になると赤黄色になります。紅葉は、海岸からも始まりつつあります。『四季花ごよみ・秋』(1987・講談社)所載。(小笠原高志)


October 13102012

 足首を褒められてをりこぼれ萩

                           祐森水香

だ細いだけではなく、アキレス腱がくっきりと美しい足首だろう。こぼれつつ咲く萩の道、作者のやや後ろを歩きながら散り敷く萩に向られていた誰かの視線が、つとその足首に見惚れてしまったというわけだ。スカートの丈はやや長め、裾が揺れ、萩が揺れ、長い髪も揺れ、それらのやわらかいゆらぎと、アキレス腱の繊細な凛々しさの対比が魅力的だ。きれいな足首ですね、と後ろから話しかけられた作者、お綺麗ですね、スタイルがいいですね、などと言われるのには慣れていても、足首をピンポイントで褒められるということはそうは無いことだろう。あらそうですか、ありがとうございます、などと言いながら、ふと感じているその恥じらいに、こぼれ萩、がほんのりと色香を添えている。『月の匣』(2011年12月号)所載。(今井肖子)


October 12102012

 秋の夜の畳に山の蟇

                           飯田龍太

穴を出づといえば春の季語。蟇だけだと夏の季語。この句秋の夜の蟇だから理屈でいえば冬眠前の蟇ということになろうか。山国ならではの実感に満ちた句だ。一句の中に季語を二つ以上用いるのはやめた方がいいと初心の頃は教わる。まして季節の異なる季語を併用するのは禁忌に等しい。そこを逆手に取って最近は敢えて一句に季語を二つ以上使ってみせる俳人もいるが技術の披瀝を感じるとどこかさびしい。この句、季語を二つ使ってみました、どんなもんだの押し付けはない。自然で素直で、インテリジェンスもダンディズムも感じない。本当の本物だ。『蛇笏・龍太の山河』(2001)所収。(今井 聖)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます