12月はイベントが多い。その反動で11月は少ない。関係ないけど。(哲




2012ソスN11ソスソス8ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 08112012

 日本海時化をる柿の甘さかな

                           しなだしん

は瀬戸内の端っこにある神戸で育った。瀬戸内の島へ渡るフェリーや海釣りの小型船に乗ったことしかないが、荒れ狂う海を見た覚えがない。大人になって日本海や太平洋の島々へ船で渡る機会も増えたが、驚いたのは少し天候が悪くなると海がその様相を一変させることだった。定期船が欠航になったその日に小さな漁船が木の葉のごとく高波に上下する様を島の浜から眺めているだけで船酔いしそうになった。特に日本海は北西の季節風が吹く冬場なると波高く荒々しい海へ変貌するようだ。「時化をる」とあるから数日同じような海の状態が続いているのだろう。日本海に取り囲まれた佐渡島には「おけさ柿」という高品質の柿がある。柿が甘くなるのと海の時化とは関係がないだろうが掲句を読むと荒波に揉まれることで柿の甘味が増すように感じられる。『隼の胸』(2011)所収。(三宅やよい)


November 07112012

 何にても大根おろしの美しき

                           高橋順子

根を詠んだ句は多いし、「大根洗」「大根干す」などの季語もある。それだけ古くから、大根は私たち日本人の暮しにとって欠かせないものになっているというわけである。食料としてはナマでよし、煮てよし、炒めてよし、漬けてよしである。それにしても、「大根おろし」の句はあまり見かけない。簡単に食卓に並べられる大根おろし。その水気をたっぷり含んだ素朴さに、順子は今さらのようにその美しさを発見し、素直に驚いているのだ。下五を「美しさ」としたのでは間抜けな感嘆に終わってしまうけれど、「美しき」と結んだことで句としてきりっと締まり、テンションが上がった。食卓で主役になることはあり得ないけれど、「大根おろし」がないとどうしようもない日本のレシピはたくさんある。おろしには食欲も気持ちもさらりと洗われる思いがする。大根そのもののかたちは「美しき」とは必ずしも言えないけれど、おろしにすることによって、水分をたっぷり含んだ透明感があって雪のような純白さには、誰もが感嘆させられる。「美しき」とは「おいしさ/美味」をも意味しているのだろう。大根のあの辛味もなくてはならないもの。掲句には女性ならではの繊細な観察が生かされている。順子の他の句「しらうをは海のいろして生まれけり」にも、繊細で深い観察が生きている。『博奕好き』(1998)所収。(八木忠栄)


November 06112012

 活けられて女郎花とはさみしかり

                           橘いずみ

ロギクやイヌフグリなど、花の名には気の毒なものが見られるが、女郎花もそのひとつである。鮮やかな黄色でありながら、粟粒が集まったような控えめな花である。群生していてこその美しさもあり、一本折り取ると存在がことさら薄まってしまう。花瓶など花として活けられたときの所在なさはいかばかりか。女郎花といえば「紫式部日記」のなかで触れる女郎花の項の終わりかたはひときわ印象的だった。「その折はをかしきことの 過ぎぬれば忘るるもあるは いかなるぞ」、意訳すると「その時は興味をもっていたのに、時が経つと忘れてしまうものなのね」。花言葉は「約束を守る」。なんとも皮肉に思えるものの、これもまた時が経てば忘れてしまうのかもしれない。『燕』(2012)所収。(土肥あき子)




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