November 122012
こがらしや子ぶたのはなもかわきけり小野敏夫古い読者にはおなじみの句。十二年前の掲示板で作者探しがはじまり、この間多数の読者にご協力をいただきましが不明のままで過ぎてきました。そしてまさにいま「こがらし」の季節に、ようやく土肥あき子さんが突き止めてくれました。詳細については「ZouX」304号をご覧ください。作者が当時の群馬在住だったこともわかり、群馬といえば「上州の空っ風」で有名な土地ですから、句の「こがらし」はさぞや猛烈な勢いで吹いていたことでしょう。敗戦直後のころには、豚を飼っている農家は少なくありませんでした。だから「子ぶた」も、小学生の作者にとっては親しい存在です。登校途中ででも目撃したのでしょうか。可愛い子ぶたたちが、寒さに震えて身を寄せあっている姿が目に浮かんできます。「はなもかわきけり」とは、なかなかに鋭い観察ですね。なお、原句は「凩や小豚の鼻も乾きけり」というものでした。教科書に載せるにあたって、文部省がやさしい表記に改めたのでしょう。どちらが良いとは一概には言えませんが、作者がご健在なら、そのあたりのことも含めてご感想をお聞きしたいと、また新しい欲が湧いてきました。「少国民の友」(1946年4月号)初出。(清水哲男)
|