cテ子句

December 03122012

 踏台に乗ること多し年の暮

                           田中太津子

われてみれば、ずばりその通りだ。普段から気になってはいるものの、高いところのものの整理や掃除は、つい億劫でそのままにしてしまう。だが、年の暮ともなると、意を決して踏台に乗るのだが、これが一度手をつけはじめると、なかなか終わらない。あちらの高いところ、こちらの高いところと、踏台を引きずって歩き回ることになる。まさに「年の暮」ならではの行動だ。この句を読んで、すぐに取り換えるべき我が家の蛍光灯を思い出した。もう十年ほど前のことになるだろうか。実家に行ってみると、玄関先の電球が切れていて、やけに暗い。そのことを八十歳を過ぎた母に言ったら、踏台に上がれなくなり交換できないということだったので、私が何の苦もなく付け替えた。老いるとは、たとえば踏台を使えなくなるということか。そのときはふっとそんなことを思ったのだったが、近年はとうとうこちらにお鉢が回ってきてしまった。先日、それこそ電球を交換しようと踏台に上ったら、腰から崩れて踏台ごと転倒する羽目に…。さて、年の暮だ。あの蛍光灯をどうすればよかんべえか。『星の音』(2012)所収。(清水哲男)




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