December 082012
枯木立ごしに電車の黄色かな
小沢薮柑子
幹の枯れ色の重なる先を、黄色い電車が通り過ぎてゆく。それだけの景なのだが、黄色かな、の措辞がおもしろくちょっととぼけたような印象もある。電車が走っているのは枯木立の続く向こう、やや遠くなのだろう。歩いていると動く物が視界に入り、あ、電車だ、と立ち止まる。色彩の乏しくなってきた風景の中、電車の黄色は冬日に明るさを増し、青空の下でまぶしく見えている。掲出句のある句集『商船旗』(2012)には、黄色かな、の句が〈えにしだの撒き散らしたる黄色かな〉〈無造作の反魂草の黄色かな〉と二句ある。花の黄色と電車の黄色、強い切れである、かな、の印象の違いをあらためて感じさせられた。(今井肖子)
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