年末年始のゴミ収集日をチェック。燃やせるゴミは9日間の空白。(哲




2012N1218句(前日までの二句を含む)

December 18122012

 白鳥の双羽がこひに眠りたし

                           鈴木鷹夫

ャイコフスキーの名作『白鳥の湖』に登場する白鳥は、美しい姫が魔法によって姿を変えられたものだった。鳥のなかでもっとも気高く美しい白鳥にすることで、どれほど美しい姫であったかを想像させる。しかし、イメージの華麗さと異なり、実際の白鳥の着水は体重の重さも相まってどたどたっとしたものだ。オオハクチョウになると体重8キロから12キロ。両翼を広げた状態の差し渡しは2〜2.5メートルというから、掲句に隣合う〈近づいて来る白鳥の大いなる〉の迫力はいかばかりかと思う。「双羽がこひ」という言葉は初見だったが、それが純白の翼をうっとりと打ち重ねた様子であることは容易に想像がつく。そして、その翼の内側のおそらくもっともやわらかい羽毛のなかに抱かれ眠りにつきたいという作者の心持ちにはいたく賛同する。人間は両腕を広げた長さと身長がほぼ同じだといわれる。2メートルの大いなる母に抱かれた夜はどんな夢を見るのだろう。『カチカチ山』(2012)所収。(土肥あき子)


December 17122012

 忘年や水に浸りてよべのもの

                           山田露結

の台所。昨夜の忘年会で使った食器類が、そのまま水に浸っている。ちゃんと洗って片づけてから休めばよかったのにと思うけれど、疲れてしまって、とてもそんな気力はなかったのだ。それこそあとの祭りである。それにしても、何たる狼藉の跡か。この皿は欠けているけれど、いつどんなことでこうなったのか、何も思い出せない。きっとこんな光景は、毎年のことなのだろう。ある意味では、本番の忘年会よりも、こちらのほうに年の瀬を感じさせられる。「さあ、やっつけるか」と腕まくりをして洗いにかかる。水道の蛇口を全開にして洗いはじめると、今年もいろいろあったなあと、はじめて忘年の思いが胸をかすめはじめるのである。『ホームスウィートホーム』(2012)所収。(清水哲男)


December 16122012

 ラガー等のそのかちうたのみじかけれ

                           横山白虹

ーサイドのあと、勝者の歌は短い。なぜなら、ノーサイドの瞬間に、敵も味方もなくなるからである。ノーサイドのあとに残るのは、互いに火照った肉体、うずき始める筋肉の、骨の痛み、試合中は気にならなかった血が流れ、熱く流れ出た汗は、じきに冷えていく。ラガー等にとって、勝つことはボールを奪うことであり、タックルで止めることであり、有効にボールを蹴ること、回すこと、その瞬間を待ち、その瞬間を作り続けること以外にはない。勝つことは、試合中の80分間のみに集中されているゆえに、ノーサイドの笛のあとの勝ち歌は、短い儀式に過ぎない。かつ、相手を思いやる気持ちでもある。走り、蹴り、パスして、組み、押し、つかみ、離さず、奪い取る。全身の筋肉を使い果たしたラガー等は、一度、ラグビー場で命を燃焼し尽くしたがゆえに、あと歌はおのずと短い。『日本大歳時記・冬』(1981・講談社)所載。(小笠原高志)




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