December 212012
雪二日馬も偽装の白衣着ぬ
須合軍曹
俳号は軍隊の階級のまま。「寒雷集」次巻頭三句の中の一句。投句地は営口とある。営口は中国遼寧省の遼河河口の港湾都市。従軍地からの投句である。そうか、雪中では馬に偽装のための白衣を着せたんだなと軍の装備の細やかさにあらためて驚く。この句、表現に無駄のない良い句である。ヒューマニズムや反戦意識の押し付けは「正義」ばかりが表に出て今ふうにいうと「どや顔」の俳句になる。こういう淡々と事実を見据えた表現にこそ時代の真実が浮き彫りになる。軍曹は下士官。僕らの世代は人気テレビ映画「コンバット」のヴィック・モロー扮するサンダース軍曹を思い出す。最前線に張り付いて部下を愛し叱咤しながら敵を粉砕してゆく「現場監督」だ。須合軍曹は果たして生還できたのかどうか。「寒雷・昭和17年3月号」(1942)所載。(今井 聖)
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