February 082013
枯並木蒼天の北何もあらぬ
阿部しょう人
作者は1900年生まれ1968年没。52年より俳誌「好日」を主宰。著書である俳句の手引き書「俳句 四合目からの出発」はさまざまの例句をあげて欠点を指摘する「べからず集」として話題を呼んだ。この句、新京大同広場の前書きがある。新京は満州国の首都で長春を改名したもの。敗戦の後はまた長春に戻った。「蒼天の北何もあらぬ」が島国に住むものにとっては想像を絶するほどの広大さを思わせる。「何もなし」にすれば字余りは避けられるのに「何もあらぬ」と置いた強い詠嘆を感じさせる効果。枯木立ではなくて枯並木と置いた工夫。どちらも類型を嫌う配慮が見える。才を感じさせるのに十分な手際である。「寒雷・昭和十七年三月号」(1942)所載。(今井 聖) 【お断り】作者名「しょう」、正しくは竹冠に肖です。
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