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February 0922013

 春の空後頭部から水の音

                           岩崎康史

月の空は、秋の高い空とはまた違った青さを見せて美しいが、時にゆるゆると霞んだ春の空になる日もある。先週末、雨がぱらついた時は久しぶりにやわらかい土の匂いが漂って、立春の日の空はぼんやりと春めいた色をしていた。掲出句、もう少し春が深まって暖かさを感じる頃だろう、ただ、立春の日の淡い空の色が、昨年の夏に読んだこの句を思い出させた。俳句初心者の高校生が初めての吟行で作った句だ。後頭部から水の音、は、春の池が自分の後ろにある感じ、と本人は言っているが、頭の中で水音がしているようにも思える。それは、せせらぎの音なのか魚が跳ねる音なのか鳥の羽が水面を打つ音なのか。いずれにしても、水音を後ろに感じながら、春の空、と視線を広々とした空へ誘っているのがいい。読者も作者同様、空を見上げ深く一つ息をして、音や光やさまざまな春のざわめきを感じることができるのだ。今井聖『部活で俳句』(2012・岩波書店)所載。(今井肖子)




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