決勝は浦和学院対済美。選抜は負けても夏があるから明るくてよい。(哲




2013ソスN4ソスソス3ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 0342013

 花ぐもり机に凭れ空ろなる

                           五所平之助

之助は映画「マダムと女房」「煙突の見える場所」などで知られる名監督。若い頃には身辺に文学青年が多く、「柏舟」という俳号で句会によく顔を出し、先輩に可愛がられたという。脚本を書き、映画をつくるうえで俳句から多くを学んだ、と述懐している。「ぼくの映画には必ず季節感をとり入れた」とも語っている。ところで、今年の桜の開花は例年よりもかなり早くて、東京では三月末以前にもう満開をむかえた。花ぐもりで外気はまだ寒ささえ感じられるのだろうが、花見に出かけることもなく書斎で机に凭れて、しばし空ろな気持ちになっている。花の宴をよそに、静かな書斎で身をやすめて、花見の様子に思いをめぐらしているのかも知れない。それもまた花見どきの人の心のありようを表わしている。年々歳々、花見に出かけて行ってもバカ騒ぎをすることにも飽きて、缶ビールを飲みながら何とはなしに、しばし「空ろ」の時間に身をあずけている自分に気づくことがある。平之助には句集『わが旅路』(1979)がある。他に「花明りをんな淋しき肩を見す」がある。(八木忠栄)


April 0242013

 受験子に幼き日あり合格す

                           伊藤敬子

在暮らしている地域にはいくつかの女子大があるせいか、若い女性のたてる小鳥のような笑い声がいつも身近にある。日頃、大学前のバス停を利用していることもあり、受験や合格発表など、一喜一憂する姿にも触れる機会が多い。この時期面差しの似通った母娘らしいふたり連れが地図を片手に歩いているのをたびたび見かけるが、おそらくこれから暮らす町の下見をしているのだろう。生まれてから、育ち、巣立つまでに支え続けるたくさんの手から、新しい明日へと送りだされる。合格の喜びは、当事者が未来を見つめるのに対し、掲句は過去へと思いを寄せる視線である。十代には十年十五年という歳月ははるか彼方の遠い日々だが、大人にとってはつい昨日のようなできごとである。この町にも来週には親元を離れた瑞々しい新入生たちがあふれるだろう。大きな鞄を抱えて緊張のほどけぬ顔も、一ヶ月もしないうちにすっかりなじんでしまうのだから、若者の順応力とはすばらしい。一方、東京で暮らす娘たちに不安でたまらない郷里の親御さんを思うと「まめに連絡してあげて」と願わずにはいられない。『びょう茫』(2013)所収。※句集名「びょう」は水が三つ重なった機種依存文字。(土肥あき子)


April 0142013

 入学式の真中何か落ちる音

                           衣斐しづ子

賓などの祝辞や挨拶がつづくなか、静かな入学式場の真ん中あたりから、いきなり何かが落ちた音がした。一瞬ざわめきのように周囲の空気が揺れて、しかしその後は何事もなかったように、式が進行していく。いったい、何がどんな弾みで落下したのか。しばらく気にしていた作者も、やがてそんなことは忘れてしまう。が、後に入学式のことを思い出すたびに、必ずこの不思議な音も思い出すのだから、すっかり忘れてしまったというわけではない。いや、年月を経るにつれて、だんだん思い出すのはこの音のことばかりになってきた。こういうことは、記憶のメカニズムにはありがちだろう。小学校から大学まで、私も入学式には出席したけれど、式のメインである校歌斉唱や祝辞などは何一つ覚えていない。覚えているのは、記念撮影のときに乗った教壇がいまにも壊れそうに古ぼけていたこととか……。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所収。(清水哲男)




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