゚泥句

April 1342013

 霾天の濃きがうすきに動きくる

                           近藤美好女

和九年の作なので混じりけのない?黄沙、それも相当本格的である。これを書いている今日、気象庁の黄沙情報図を見ると、北海道の一部を除いて日本列島全体が黄色く覆われているが、窓から見える東京の空は白く霞んでいて薄曇り、あまり実感はない。掲出句、濃きがうすきに、の漢字とひらがなに黄沙の色の違いがよく見えて、二つの助詞が遠近感をはっきり表している。そして、霾天の、と大きく表現することで、頭上に広がる空の彼方からより濃い砂埃がゆっくりと押し寄せてくる光景が目に浮かび、むずむずぞわぞわ恐ろしい。この句を引いた『ホトトギス雑詠選集 春の部』(1987・朝日新聞社)の作者の地名欄は、黄海道。朝鮮半島の中ほどの地と知れば、黄沙の臨場感も肯ける。(今井肖子)




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