April 272013
旨さうな「うどん」といふ字春の雨
岩崎ゆきひろ
うどん、とひらがなで書くと、うどんに見えてくる。ことに、ん、の曲線がうどんぽくて、なるほどなあ、と。先月本屋で見かけた雑誌には、うどんの国ニッポン、の見出しと共に、手打うどん、の文字が黒々と躍っていた。うどん屋の看板をあれこれ見てみると、確かに太く勢いのあるものが多くその文字を見ると、ゆでたてのぶっかけうどんを勢いよく啜りたくなるのだ。掲出句、看板を明るく濡らす春の雨である。このところ冷えこんでいる東京の雨には春雨の艶やかな印象は乏しく、育ってきた緑をしっとりと包んでいて、こんな日なら暖かい汁たっぷりのうどんが食べたくなりそうだ。いずれにしても、春の雨、が一句に広がりを与えて詩にしている。『蟹の恋』(2012)所収。(今井肖子)
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