「カタログを送りたい」と電話。で、住所氏名を確認するわけか。(哲




2013ソスN6ソスソス13ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

June 1362013

 玉手箱風なり 開ければさくらんぼ

                           伊丹三樹彦

形名産「佐藤錦」を送っていただいたことがある。蓋を開ければぎっしりと大粒のさくらんぼがきれいに詰められていて、ルビー色に光るその美しさにため息が出た。詰められた箱は何の変哲もない白い果物用のダンボールだったのだけど、蓋を開けたときの感嘆はまさしく玉手箱を開けたときの驚きだった。掲句では、そうした感嘆の比喩ではなく詰められている箱そのものが玉手箱のようなので「玉手箱風」なのだろうか。この「〜風」が謎だけれど、箱詰めにされた「さくらんぼ」ほどきらめきが魅力的な果物はないように思う。その美しさは虚子の「茎右往左往菓子器のさくらんぼ」の自在さとはまた違った魅力がある。『続続知見』(2010)所収。(三宅やよい)


June 1262013

 かばやきのにほひや街のまひる照り

                           網野 菊

どきの下町であろうか、鰻屋が焼くあの「かばやきのにほひ」である。あたりに遠慮なく広がるおいしい香りはたまらない。かばやきのタレ作りは、その店その店で企業秘密とされる。味もさることながら、どうして独特な脂まじりの匂いがおいしいのだろうか? あの匂いをいやがる日本人は少ないと思う。焼鳥や秋刀魚を焼く匂いの比ではない。しかも街は夏のかんかん照りである。この「照り」が「にほひ」をいっそう引き立てている。ところで、鰻を扱った傑作落語はたくさんある。かばやきの匂いと言えば、ケチの噺のまくらとして登場するこんな小咄がある。ーーあるお店(たな)で昼どきになると、隣の鰻屋のかばやきの旨い匂いをおかずにして、そろっておまんまを食べる。月末に鰻屋が「嗅ぎ料」として勘定をもらいに来た。そこで主人は袋に入れた小銭をジャラジャラ鳴らして、その音だけを「嗅ぎ料」として支払った。どっちもどっちで、しかもじつにシャレているではないか。作家・網野菊を知る人は今や少ないだろうが、多くの俳句を残した。他に「短夜のはかなくあけし夢見かな」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)


June 1162013

 洗はれて馬の鼻梁の星涼し

                           鈴木貞雄

は栗毛や葦毛などの毛色とともに、顔や脚にある白斑が大きな特徴になる。額にある白斑を「星」と呼び、額から鼻先へ流れるそれを「流星」と呼ぶのは、いかにも颯爽とした馬に似つかわしい美しい名称である。乗馬を終えた馬は思いのほか汗をかいており、夏はクールダウンのため水をかけることもある。鞍を外し、水を浴び、全身を拭いてもらった馬は誰が見ても「あー、気持ちよかった」という表情をする。長い年月人間と関わってきた動物には、言葉はなくとも意思をやりとりできる術を心得ているのだろう。あるじの手入れの労に応えるように、洗い立てのつやつやした四肢を輝かせ、頭をぶるんとひと振りすれば、額の星がひときわ白く映える。それはまるで夏空にきらめく涼やかな星のように。〈てのひらに叩き木の芽を覚ましけり〉〈二番子にやや窶れたる燕の巣〉『墨水』(2013)所収。(土肥あき子)




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