都合により、ZouX322号は発行を明日に延期させていただきます。(哲




2013ソスN6ソスソス16ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

June 1662013

 与太者も足裏白き昼寝かな

                           岡本敬三

月三日に他界された岡本さんの句です。月曜の清水さんも「控えめな人柄であった」とおっしゃっているとおり、句会では、細身の躯を控えめにたたみ、主張するというよりも、よく人の話に耳を傾ける人でした。だから、文学少女の心を保ち続けている女性たちに慕われることが多く、他の男衆はうらやましがっておりました。怒る、どなる、意地悪をいう、そんな感情はどこかに置いてきて、句会をしみじみ楽しんでおられました。掲句は、十年ほど前の「蛮愚句会」で詠まれた句です。岡本さんが、「ぼくは、足の裏が好きなんですよ」と云ったことが印象深く、後にも先にもそんな嗜好を聞いたのはこれっきり、ありません。考えてみれば、足の裏はふだん隠れていて、体の中でも気にしない部分です。たとえば、悪人には悪人の人相とか、善人には善人の人相とかがあるのかと思われますが、足の裏は、善人も悪人も偉人も凡人も大差ないでしょう。人類は、足の裏において平等に白い、岡本氏はこう言いたかったのかどうか、もう聞けないのが悲しい。たぶん、そんな大げさには考えていないよと、静かに、喉の奥からおっしゃるでしょう。なお、岡本敬三の小説に『根府川へ』(筑摩書房)があります。句誌『蛮愚』(別冊・30回記念・2002)所載。(小笠原高志)


June 1562013

 一人づつ菖蒲の中を歩きけり

                           長谷川かな女

週末、見頃を迎えつつある明治神宮御苑の菖蒲田へ。緑の中の小径を行くと、梅雨晴の底に水を湛えた菖蒲田が広がり、しっとりとした紫の風が渡ってゆく。休日ということもあり賑わっていたがそう言われてみれば、連れ立ちながらも一人ずつ静かに菖蒲田を巡り、立ち止まっては「都の巽」「十二単」などの名札と花を見比べながら、〈紫の菖蒲に妻と入れ替る〉(古舘曹人)。深い大和紫や光を集める白、すっと立つその茎の先にやわらかくほぐれる花弁、かすかな水音。それらを言葉にすることなく、対峙すると背筋が伸びるような花菖蒲の美しさが見える一句となっている。『花の大歳時記』(1990・角川書店)所載。(今井肖子)


June 1462013

 立ちしまま息をととのふ水中花

                           櫻井博道

中花だから「立ちし」はわかるけど、なんで「息をととのふ」なのかというと作者の呼吸が苦しかったのだった。宿痾の結核とずっと付き合ってきた博道(はくどう)さんが水中花を見ている。対象と自己とが一枚になるようにという楸邨の方法がここにも生かされている。逆に考えてみよう。博道さんの人生についてまったく無知であったとき、或は作者名を消してこの句だけを見たとき、この「息ととのふ」は同様の感興を伝えるや否や。本人についての正確な事実を知っている場合よりは漠然とはするけれど、やはり作者の尋常ではない呼吸の状況が推測できると僕は思う。水中花を見ているときも呼吸への意識が離れないということであることだけはこの表現から確かだからだ。『椅子』(1989)所収。(今井 聖)




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