October 032013
爪先から淋しくなりぬ大花野
山岸由佳
俳句を始める前までは「花野」といえば春だと思い込んでいた。春と秋では咲く花の種類も空気も違い、まったく異なった野の風景になる。尾花、萩、女郎花、撫子、吾亦紅、赤のまま、色鮮やかな春の花とは違い、色も姿も控え目で寂しさを感じさせる。花を輝かせる日ざしもうつろいやすく、花野の花を楽しんでいるうち、たちまちに夕刻になり心なしか風も寒く感じられる。爪先から感じる冷えがしんしんと身体に伝わってきて心細さが身体全体を包んでゆく。「花野」のはかなさが「淋しい」冷たさになって、読み手にも伝わってくるようだ。「風」(炎環新鋭叢書シリーズ6『風』)(2012)所載「海眠る」より。(三宅やよい)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|