天高し。今週は秋晴れのさわやかな天気がつづきそう。(哲




2013ソスN10ソスソス28ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

October 28102013

 霜柱土の中まで日が射して

                           矢島渚男

を読んで、すぐに田舎の小学校に通ったころのことを思い出した。渚男句を読む楽しみの一つは、多くの句が山村の自然に結びついているために、このようにふっと懐かしい光景の中に連れていってくれるところだ。カーンと晴れ上がった冬の早朝、霜柱で盛り上がった土を踏む、あの感触。ザリザリともザクザクとも形容できるが、靴などは手に入らなかった時代だったから、そんな音を立てながら下駄ばきで通った、あの冷たい記憶がよみがえってくる。ただ、子供は観照の態度とはほとんど無縁だから、よく晴れてはいても、句のように日射しの行く手まで見ることはしない。見たとしても、それをこのように感性的に定着することはできない。ここに子供と大人の目の働きの違いがある。だからこの句に接して、私などははじめて、そう言われればまぶしい朝日の光が、鋭く土の中にまで届いている感じがしたっけなあと、気がつくのである。『延年』(2002)所収。(清水哲男)


October 27102013

 月山の雲の犇めく芋煮会

                           後藤杜見子

北の秋は、芋煮会だと聞かされておりました。今月半ば、山形の映画祭に行く用事があり、初めて芋煮汁をいただきました。聞くと食べるのでは大違い。芋は里芋で、つるんと口から食道を通過し、一口大に切られたちぎりこんにゃくも同様、つるんと胃袋へ。味のしみ込んだごぼうとにんじんをもぐもぐ噛み、かつをとしいたけのだしの利いた温かいうす醤油味の汁をのみ込む所作を繰り返して、おかわりをいただきます。直径1m程の大きな鉄鍋で作っているので、いくらおかわりをしても大丈夫な大盤振る舞い。山形の人のよさ温かさを堪能しました。山に囲まれた盆地のせいか、雲はやや低くうす黒く濃い青空で、太平洋と日本海真ん中の山あいの気候でした。掲句、「月山の雲の犇(ひし)めく」中で作られる芋煮は、具も味も人々も多様な豊穣の秋です。『新日本大歳時記・秋』(講談社・1999)。(小笠原高志)


October 26102013

 潮騒の人ごゑに似て温め酒

                           上田日差子

暦九月九日が寒暖の境い目、その後は酒を温めて飲むと体によいとされていたという。今年は先週の日曜日、十月十三日だったが、立て続けの台風襲来で寒暖の差が激しく、なかなかそんな気分にもなれなかった。まあでもさすがに日が落ちれば肌寒く、あたためざけ、ぬくめざけ、がしっくりくるようになって来たこのところだろう。温め酒は一人で、せいぜい二人差し向かいでやるのが似合っている。広い居酒屋などでゆっくり飲むうちに酔いがやや回って来て、周囲のざわめきの中に身を置いていることが妙に心地良くなってくることがある、なるほど潮騒か。人ごゑの潮騒に似て、では広がりがなくなる。などと思ったが普通に考えれば、作者はかすかな潮騒に耳を傾けながら少し人恋しくなっているのだろう。いずれにしても、温め酒、に趣が感じられる。『和音』(2010)所収。(今井肖子)




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