ソスソスソスソスソスソスソスソスソスソス句

November 14112013

 壺割れてその内景の枯野原

                           東金夢明

くら上から覗き込んでも口がつぼまった壺の内側を見るのは難しい。割れて初めて薄暗い壺の内側に光があたり、そこに描かれた景色が広がるとは極めて逆説的だ。なだらかな球形であるべき壺の内側が破壊されたことで一枚の枯野原となる、低く垂れこめた空の下、モノトーンの寂しい景色がどこまでも続く。様々な想像を呼び寄せる句だ。こうした句に出会うと日常、見過ごしている物にさまざまに異なる世界が被さっていることに気づかされる。ふとした瞬間に異次元の世界への扉が開く、そうした世界によく分け入る人は、俳句の言葉で別の世界の入り口を探し当てられる人なのだろう。『月下樹』(2013)所収。(三宅やよい)


August 2382014

 白桃の浮力が水を光らせる

                           東金夢明

ンクに水を張って白桃をそっと入れてみた。水に触れた瞬間、表面の産毛に細かい泡がきらきら生まれ、手を放すと桃はゆらりと少し浮く。そして、水中で自重と浮力のはざまを行ったり来たり、指で軽くつつくと沈み切ってしまう直前の危うさでたゆたっていた。無数ともいえる産毛の一つ一つがまとう光は、透明な水をより透明にして想像以上に美しい。白桃という、色合いといい形といいこの上なくやわらかいものと、浮力というやや硬い言葉と、水を光らせる、という断定的な表現との出会いが、この想像以上の美しさを鮮やかに見せている。『月下樹』(2013)所収。(今井肖子)


June 0562015

 万緑やいのちは水の匂いして

                           東金夢明

渡すかぎり緑の世界が広がっている。思えば地球は水の世界。たっぷりと水を吸って豊かに緑が育まれている。この水の中にわれらが「いのち」は生まれ、緑なす大地の風を呼吸している。時は今、新緑萌え盛り鳥は鳴き花は咲き誇っている。風の中に漂う水の匂いを感じつつ、様々な命が満々たる緑に包まれている。この地球に緑に命にそして水の匂いに乾杯!<振り向けば振り向いている雪女><喉ぼとけ持たぬ仏や秋の風><木枯の着いたところが地下酒場>など。『月下樹』(2013)所収。(藤嶋 務)




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