@ト子句

December 07122013

 朴落葉反り返りつつ火となれり

                           原 夏子

週間ほど前、久しぶりに朴落葉と遭遇。冬紅葉がまだあざやかな武蔵野の落葉径、ひときわ大きく反り返る朴落葉にどきりとさせられた。葉裏の色は散りたての銀色からだんだん石のように青ざめ、魚をも連想させる。しばらく佇んで見ていたものの、言葉は同じところをぐるぐるするばかりだったのだが、掲出句を見てあの時見た朴落葉が、冷たい色のまま最後の生気を失ってやがて枯色となってゆく様が見えるような気がした。実際は落葉を焚いているのだろう、その中でひときわよく燃えている朴落葉なのだ。すぐそう思ったが一瞬、よみがえった記憶の中の朴落葉に不思議な命の火の色が見えた気がしたのだった。『季寄せ 草木花 冬』(1981・朝日新聞社)所載。(今井肖子)




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