2013ソスN12ソスソス7ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

December 07122013

 朴落葉反り返りつつ火となれり

                           原 夏子

週間ほど前、久しぶりに朴落葉と遭遇。冬紅葉がまだあざやかな武蔵野の落葉径、ひときわ大きく反り返る朴落葉にどきりとさせられた。葉裏の色は散りたての銀色からだんだん石のように青ざめ、魚をも連想させる。しばらく佇んで見ていたものの、言葉は同じところをぐるぐるするばかりだったのだが、掲出句を見てあの時見た朴落葉が、冷たい色のまま最後の生気を失ってやがて枯色となってゆく様が見えるような気がした。実際は落葉を焚いているのだろう、その中でひときわよく燃えている朴落葉なのだ。すぐそう思ったが一瞬、よみがえった記憶の中の朴落葉に不思議な命の火の色が見えた気がしたのだった。『季寄せ 草木花 冬』(1981・朝日新聞社)所載。(今井肖子)


December 06122013

 招き猫水中の藻に冬がきて

                           波多野爽波

き猫は、前足で人を招く形をした猫の置物。商売繁盛の縁起物とされている。店頭に置かれてあったりするのを見ることが、よくある。招き猫は、本来、おめでたいものであるが、この句では、そのような既成概念が、招き猫から払拭されている。中七以降、「水中の藻に冬が来て」は、あたかも、招き猫が、冬を呼び寄せたかのようである。作者の感情は、負の方向に働いている。ユーモラスな招き猫が、不気味な存在であるかのように感じられる。『骰子』(1986)所収。(中岡毅雄)


December 05122013

 寒鴉歩く聖書の色をして

                           高勢祥子

の少ない今の時期、電柱などに止まってゴミ出しの様子を伺っている寒鴉の翅の色は冴えない。祈祷台にあり多くの人の手で擦れた聖書はくたびれた黒色をしている。街角にひっそりたたずみ、道行く人に聖書を説く人の多くは黒っぽい服を着ていてまるで鴉のようだ。「とんとんと歩く子鴉名はヤコブ」の素十の句なども響いてくる。そんな連想をいろいろと呼び込む聖書の色と寒鴉の結びつきに着目した。同句集には「曼珠沙華枯れて郵便受けの赤」という句もあって、植物や動物の色をリアルに感じさせる色彩の比喩がうまく句に組み込まれている。『昨日触れたる』(2013)所収。(三宅やよい)




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