February 012014
雪が来る耳のきれいな子どもたち
大島雄作
この句を読んでふと浮かんだのは、バレエや体操などをしている少女のお団子ヘア、正式に何と呼ぶのかわからないが、近くの駅でよく見かける少女たちの姿だ。練習の行き帰り、彼女らの服装はまちまちだが、このヘアスタイルはおそろいである。時折笑い声をあげながら電車を待っているその声も表情もあどけない彼女たちがふと見せるきりりとした横顔。てっぺんのお団子に向かう髪の直線と、細い首から顎にかけての曲線、そのシンプルなラインの真ん中にある複雑な形の耳の存在をあらためて認識した。雪催の灰色の空の下、白い息を吐きながら笑い合う少女たちのむき出しの耳の清々しさとヒトらしいうつくしさはまさに、きれい、なのだろう。『春風』(2013)所収。(今井肖子)
January 312014
雪うさぎ柔かづくり固づくり
波多野爽波
雪うさぎとは、盆の上に雪の塊をのせ、目は南天の赤い実をつけ、兎の形にしたもの。その雪うさぎに、柔らかく固めたものと、かたく固めたものとがあるというのだ。雪うさぎを実際に作っている触覚が蘇ってくる。一句は巧まず、イメージを素直に詠んでいる。爽波には、シャープでシュールな感覚の句が多いが、こんな繊細でメルヘンチックな句もあるのだ。『骰子』(1986)所収。(中岡毅雄)
January 302014
青空の雫集めて氷柱かな
齋藤朝比古
雪国の暮らしに、軒先に伸びた氷柱は時に危険なものになりかねず、その始末も大変だろう。しかし家の内側から空を見上げる角度に垂れ下がり、夜空の星や、空の光を受けてきらきら光る氷柱はとてもきれいだ。屋根に積もった雪が家から伝わってくる熱に溶かされて軒先から少しつずつ滴る。その滴りがだんだんと凍ってゆき、軒先に棒状の氷柱が伸びてゆく。空から来た雪が解けて氷柱になる不思議、「青空の雫」という表現にそうした来歴ばかりでなく雪晴れの空を封じ込めてうす青く光る氷柱の美しさを感じさせる。『累日』(2013)所収。(三宅やよい)
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