PC遠隔操作事件の片山被告の保釈許可。冤罪の可能性大か。(哲




2014N35句(前日までの二句を含む)

March 0532014

 しつけ絲ぬく指さきの余寒かな

                           奥野信太郎

つけ(躾/仕付)絲を辞書で引いたら、「絹物用にはぞべ糸、木綿物用にはガス糸」とあった。これがまたわからない。さらに調べると、「ぞべ糸」とは片撚りをした絹糸であり、「ガス糸」とは木綿糸表面のばらけ繊維をガスの炎で焼いて光沢を生じさせたものである、という。初めて知った。春になって新しくおろす着物(和・洋)のしつけ絲を器用に抜く、その人の指先には春とはいえ、まだ冬の寒さが残っているのだろう。子どもの頃、特別な日に新しくおろしてもらって着る衣服のしつけ絲を、母がピッピッと小気味よく抜いてくれたことを覚えている。さあ、暦の上では立春。ようやく春がやってきたけれども、実際にはまだ寒さは残り、女性の細い指先も、春先の冷たさを少し残しているように感じられるのだろう。しつけ絲を抜いてもらう喜びが、「余寒」のなかにもひそんでいるようだ。信太郎には、他に「炭はねて臘梅の香の静かなる」という句がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)


March 0432014

 鶯を鶯笛としてみたし

                           西村麒麟

話ではなにかにつけ美しい声が重宝された。人魚姫は声と引替えに人間の足をもらい、塔の上のラプンツェルは狩りをしていた王子の耳に歌声が届いた。王を死神から守ったのは小夜啼鳴(ナイチンゲール)の囀りであり、小夜啼鳴の別名は夜鳴鶯である。日本に生息する鳴き声が特に美しいとされる三鳴鳥は鶯、大瑠璃、駒鳥だそうだが、ことに鶯は古くから日本人に愛され、江戸時代には将軍家に特別に鶯飼という役職があったほどだ。掲句にも鶯の鳴き声に聞き惚れ、その囀りに惑わされた人間の姿が見えてくる。鶯を飼いならすには収まらず、笛として独占したいという作者に、魅了された者の悪魔的な展開が予感される。『鶉』(2014)所収。(土肥あき子)


March 0332014

 机除け書物除け即雛の間

                           中村与謝男

日の住宅事情では、昔の映画などに出てくるような特別な雛の間を作ることは難しい。それに雛本体はさして大きくなくても、かざるとなればかなりのスペースが必要だ。したがって、句のように机をずらしたり積んである本を片づけたりということになる。句集から推測すると、この雛飾りは一歳を迎えた娘さんのためのものらしい。親心が読者にも沁みてくる。我が家にも娘がいるのだけれど、どういうわけか雛に限らず人形全般が嫌いだったため、こうした苦労はせずにすんだ。しかし何も飾らないのも親として寂しいので、毎年小学館の学年雑誌の付録についてきた紙のお雛さまを、テレビの上にちょこんと乗せておいたのだった。人生いろいろ、雛飾りもいろいろである。『豊受』(2012)所収。(清水哲男)




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