母の三回忌。晩年の口癖「生まれるのは簡単だけど死ぬのは難しい」。(哲




2014ソスN4ソスソス5ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 0542014

 花の闇静かに人の気配あり

                           今井つる女

ういう花の闇には、今やなかなか出会えない。満開の夜桜を観にちょっと出かけてみたが、都内はどこも人がひしめき合っていて桜はライトアップされている。この句は昭和五十四年作、そのころ我が家を含め三本の桜の大樹が作者の部屋の窓から見えたはずである。漆黒の闇を満開の桜が仄白く照らすともなく照らす花の夜、窓辺に居るとふと人の気配がする。その気配に花の闇はわずかにゆれ、より一層静けさを増したのだろう。静かに、と言っているのが一読した時は説明のような気がしたのだが、人の気配を静かと言うことで花の闇の静けさがより引き立つのだ思うようになった。手のひらサイズの句集『吾亦紅』(1998)、変な行き詰まり方をしてるな、と自覚した時に読む。(今井肖子)


April 0442014

 春没日マウンドの高み踏みて帰る

                           波多野爽波

ウンドは、上から見ると円形で、土を盛って周囲のグラウンドよりも高くなっている。真っ赤な夕日を浴びながら、マウンドを踏んで、帰路についている。この句、下五の「踏みて帰る」が六音の字余りになり、緊迫した調べになっている。あと、「タカミフミテ」の部分、「ミ」の音が反復され、一句の後半、バウンドするような感覚上の効果がある。韻律の上から、帰宅する心躍りが伝わって来る。『湯呑』(昭和56年)所収。(中岡毅雄)


April 0342014

 学生でなくなりし日の桜かな

                           西村麒麟

学や社会人になる喜びと桜を重ねた句は山ほどあるけど、この句の感慨を詠んだ句はあるようでない。既視感のある視点をずらした表現に読む者をひきつける切なさがある。学生から社会人へ移行する見納めの桜。入学式ごと、学年があがるごと見てきた桜ともお別れ。自由で気楽な学生時代が終わるということは、親に依存してきた長い子供時代の終わりでもある。これからは自分の力で世間を渡っていかなければならない。先の見えないのはいつの時代も一緒かもしれないが、通勤途上で会う新入社員とおぼしき人たちの顔つきを見ていると、これから社会に出て行く喜びより不安の方が大きいのではないかと思ってしまう。『鶉』(2013)所収。(三宅やよい)




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