April 282014
すぐ座ると叱られている四月尽
長嶋 有
叱られているのは、たとえば新入社員。与えられた仕事がすむと、すぐに席に戻って座ってしまう。叱る側からすれば、隙あらばさぼろうとしているように見えるから叱るわけだが、新入社員から言わせれば、他に何をしてよいかが分からないから自席で待機するのだということになる。しかし先輩にそう口答えするわけにはいかないので、黙っていると、「少しは気を利かせたらどうだ」とまた叱られる。この「座る」はむろん手抜きにつながる行為の象徴であって、新入社員の一挙手一投足が、とにかく先輩社員のイライラの種になる時期がある。そして、そんなふうに過ごしてきた四月もおしまいだ。昔はここから五月病になる若者も多かったが、最近はどうなんだろう。ああ、私にも覚えがあるが、本当にすまじきものは宮仕えだな。『春のお辞儀』(2014)所収。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|