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April 2942014

 尺蠖の上に尺蠖渡る朝

                           佐藤日和太

体を屈伸させて移動することから、寸法を計っているように見えるしゃくとり虫。生真面目に移動する姿が愉快で見飽きないが、やはり同じ尺蠖でも足の遅速はあるようだ。あるいは、同じ尺蠖のなかにも丹念に計る派とざっと計る派があって、後者が前者を追い越したのだろうか。追い越す側も大きくまたいで行くわけでもなく、やはりせっせと屈伸しながら乗り越えていったのだろうと思うとなおさら愉快だ。どちらにしても手に汗にぎるレースというより、そのなりゆきを面白く見守っている様子が伝わってくる。ところで尺が長さの単位であることを理解できる世代はどれほど残っているだろう。かくいう私も尺という文字のなりたちが親指と人差し指を広げ、ものを計るかたちからきているとはこのたび初めて知った。実際に人差し指と親指を広げたとき一尺(30.3cm)というわけにはいかない。計ってみると15cm。二回分でちょうど一尺になることが分かった。本日昭和の日にふさわしい知識を得られたように思う。『ひなた』(2014)所収。(土肥あき子)




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