大型台風が東に舵を切った。列島縦断は御免こうむりたいな。(哲




2014ソスN7ソスソス9ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

July 0972014

 羅や母に秘めごとひとつあり

                           矢野誠一

にだって秘めごとの一つや二つあるだろう。あっても不思議はない。家庭を仕切って来たお母さんにだって、長い年月のうちには秘めごとがあっても、むしろ当然のことかもしれない。しかも厚い着物ではなく、羅(うすもの)を着た母である。羅をすかして見えそうで見えない秘めごとは、子にとって気になって仕方があるまい。この場合、若い母だと生臭いことになるけれど、そうではなくて長年月を生きて来た母であろう。そのほうが「秘めごと」の意味がいっそう深くなってくる。母には「秘めごと」がたくさんあるわけではなく、「ひとつ」と詠んだところに惹かれる。評論家・矢野誠一は東京やなぎ句会に属し、俳号は徳三郎。昨年七月の例会で〈天〉を二つ獲得し、ダントツの高点を稼いだ句。同じ席で「麦めしや父の戦記を読みかへす」も〈天〉を一つ獲得した。披講後に、徳三郎は「父と母の悪事で句が出来ました」と言っている。同じ「羅」で〈天〉を一つ獲得した柳家小三治の句「羅や真砂女のあとに真砂女なし」も真砂女の名句「羅や人悲します恋をして」を踏まえて、みごと。『友ありてこそ、五・七・五』(2013)所載。(八木忠栄)


July 0872014

 五十音の国に生まれて生きて鮎

                           宮崎斗士

名でも国名でも、なんでも五十音順に揃っていると意味もなくほっとする。学校などでも出席番号が名字の五十音順だったことから、今でも天野さんはいつも早く呼ばれて、中村さんは真ん中へん、渡辺さんはおしまいの方だったんだろうと、無意識のうちに五十音図をあてはめている。北原白秋の詩「五十音」は、「あめんぼ赤いな、あいうえお」から始まるが、あめんぼって黒いよね、などと疑問も持たずに覚えていた。いまや何にでも対応する五十音表の魚部門でいえば「鮎」はかなり上位である。掲句によって縄張り意識が強い魚であることも知られる鮎が、清流のなかでその名をいかにも誇らしげにすいすいと泳いでいる姿が浮かぶ。鮎は荒くれ、あいうえお、ではどうだろう。『そんな青』(2014)所収。(土肥あき子)


July 0772014

 ヘッドホンのあはひに頭さみだるる

                           柳生正名

ッドホンというのだから、たしかに「あはひ(あいだ・間)」には「頭」がある。しかし私たちは普通、そこには「頭」ではなく「顔」があると認識している。だからわざわざ「頭」があると言われると、理屈はともかく、「え?」と思ってしまう。そしてこの人は、顔を見せずに頭を突きだしているのだろうと想像するのだ。つまり、ヘッドホンを付けて下うつむいている人を思い浮かべてしまうというわけだ。ヘッドホンからはどんな音楽が聞こえているのかはわからない。が、さながら「さみだれ」のように聞こえている音楽が、その人の周囲に降っている五月雨の音に、溶け込むように入り交じっているようである。そう受け取ると、おそらくは青年期にあるその人の鬱屈した心情が思われて、読者はしんと黙り込むしかないのであろう。『風媒』(2014)所収。(清水哲男)




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