July 192014
伸びきつてゐたる暑さやタマの午後
高濱朋子
猫はタマ、の由来は様々あるらしいが現在は、庭付き平屋一戸建てに三世代のサザエさん一家同様かえって珍しい。それでも、白い猫を見て、タマ、の名前を思い浮かべる人はまだ多くいるだろう。あら、お前も暑そうねえ、とわずかな物陰に体を合わせるように身を横たえる猫に声をかける作者。そこでふと思いついた一句、猫、とせずに、タマ、とする遊び心がこの作者の持ち味の一つだ。おもしろさだけでなく、どこにでもいる白い猫のありさまを読み手が共有することは、連日の暑さをやれやれと思いつつも、日本らしい夏への愛着を共有することにつながっている。虚子の七番目の孫にあたる作者の第一句集、その名も『おそき船出に』(2014)所収。(今井肖子)
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