ハ子句

July 2372014

 幽霊の形になっていく花火

                           高遠彩子

よいよ日本中、花火花火の季節である。花火のあがらない夏祭りは祭りではないのか、といったあんばいの今日このごろである。花火も近頃は色彩・かたち・音ともに開発されてきて、夜空は従来になく多様に彩られ、見物人を楽しませてくれるようになってきた。しかもコンピューター操作が普及しているから、インターバルが短く、途中で用足しするヒマもままならないほどだ。「幽霊の形」ということは、開いたあと尾を引くように長々としだれる、あの古典的花火の様子だろう。♪空いっぱいに広がった/しだれ柳が広がったーーという童謡が想起される。しかも「なっていく」という表現で、きらめきながら鮮やかにしだれていく経過が、そこに詠みこまれていることも見逃せない。この場合の「幽霊」は少しも陰気ではないし、「幽霊」と「花火」という言葉の取り合わせも意識されているようだ。彩子はユニークな声をもつ若いシンガーとして活躍しているが、たいへんな蕎麦通でもある。『蕎麦こい日記』という著書があるほどで、時間を惜しんで今日も明日も各地の蕎麦屋の暖簾をくぐっている。他に「生くるのも死ぬるも同じ墓参り」がある。「かいぶつ句会」所属。『全季俳句歳時記』(2013)所載。(八木忠栄)




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