July 292014
あっちこっち「う」の字が泳ぐうなぎの日
山本直一
本日土用丑。ここ数年鰻の稚魚が不漁のため価格高騰が続いたが、今年は豊漁という嬉しいニュースがあった。掲句の「う」はもちろんうなぎ屋の店先に掛かる暖簾に描かれたうなぎの「う」。デザイン化されたものはみごとな鰭や尾までついている。やはり日本の暑気払いにはこれでしょう、とばかりに紺地の暖簾に白抜きの「う」の字が涼やかに客足を招いている。というわけで今年こそいざいざ、と胸を踊らせていたところだが、先月ニホンウナギが絶滅危惧種としてレッドリスト改訂版に記載されたことが報じられた。鯰も蒲焼きにすれば同じような味だという。そうかもしれない。自然保護も大切である。ああしかし、それでもやっぱり……と、鰻食いの筆者にとって、今年はなおさら「う」の字の尻尾があっちこっちに跳ねて見える。『鳥打帽』(2014)所収。(土肥あき子)
August 282014
蝦蟇公よ情報化社会と言ふらしい
山本直一
太く短い足を大地に踏ん張る蝦蟇がのっしのっしと歩いてくる。スローテンポの蝦蟇と縁側で目があって思わず呟く一言。「情報化社会というらしい」押し寄せてくる情報に振り回される時代から少し距離を置いた言葉だ。メールにネットに便利になった分「時間がない」「時間がない」と追われる一方である。何てことはない。見なければいいだけの話。と開き直ってみるが、仕事もプライベートも情報依存度や高まるばかりである。情報に尻をたたかれて動くなんてバカバカしい。勝手に忙しがってろ、と蝦蟇公は太古から変わらぬ速度でのっしのっしと我が道をゆく。「先頭はだれが決めるの?蟻の列」「世渡りが下手とのうわさきりぎりす」小さな生き物たちと友達に語りかけるあたたかさで通じ合っている鳥打帽』(2014)所収。(三宅やよい)
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