世間でも私的にもいろいろ起きるなか、八月が去ってゆく。(哲




2014ソスN8ソスソス30ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

August 3082014

 一瞬の自死向日葵の午後続く

                           岡本紗矢

射状に広がる黄色い花弁の持つ明るさと種の部分の仄暗さ、向日葵は見る人の心情を照らす花だ。この句を引いた句集『向日葵の午後』(2014)のあとがきには「通勤時に人身事故が発生し、生きることの辛さについて思い巡らしていた時、じりじりと焼けるような太陽の下、向日葵が立ち並ぶ情景に出会った」とある。向日葵が、自死のやりきれなさに対する単なる生の明るさではなく、無常観を持ちながらも明日へ向かう静かな力を感じさせるのは、続く、という一語によるものだ。先週末、生まれて初めて訪れたいわき市の海辺に、向日葵がたくさん咲き残っていた。ときおり吹く初秋の風の中、朽ちてゆきながらまっすぐ立っている向日葵の姿は深く心に刻まれている。(今井肖子)


August 2982014

 城壁一重に音絶ゆ山塊雁渡し

                           花田春兆

渡しは雁が渡って来る陰暦八月ごろ吹く北風で青北風(あをぎた)ともいう。車椅子生活の作者は海外旅行も随分したらしい。万里の長城へも行ったとあり、その際得た句である。句は漢詩調で城壁に在る時の感慨を吐露している。森閑たる一重に伸びる長城と取り囲む山塊の空には雁渡しの風がびょうびょうと吹いている。心肝寒からしめる光景に「立ち向かう覚悟」のような呟きが聞こえる。<正念場続く晩年寒の鵙><帰る雁へ托す願ひの一つあり><初鴉「生きるに遠慮が要るものか」>がある。人間遠慮が要るもんかが中々これで難しい。『喜憂刻々』(2007)所収。(藤嶋 務)


August 2882014

 蝦蟇公よ情報化社会と言ふらしい

                           山本直一

く短い足を大地に踏ん張る蝦蟇がのっしのっしと歩いてくる。スローテンポの蝦蟇と縁側で目があって思わず呟く一言。「情報化社会というらしい」押し寄せてくる情報に振り回される時代から少し距離を置いた言葉だ。メールにネットに便利になった分「時間がない」「時間がない」と追われる一方である。何てことはない。見なければいいだけの話。と開き直ってみるが、仕事もプライベートも情報依存度や高まるばかりである。情報に尻をたたかれて動くなんてバカバカしい。勝手に忙しがってろ、と蝦蟇公は太古から変わらぬ速度でのっしのっしと我が道をゆく。「先頭はだれが決めるの?蟻の列」「世渡りが下手とのうわさきりぎりす」小さな生き物たちと友達に語りかけるあたたかさで通じ合っている鳥打帽』(2014)所収。(三宅やよい)




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