ム紀V句

September 0692014

 青空とそのほかは蘆の葉の音

                           林紀之介

の蘆はちょうど今頃か、水辺にまだ青々と広がっているのだろう。真夏の青蘆の潔さは消えかけていて、渡る風音は少し乾いている。日々澄んだ青さをとり戻しつつある空、目の前には蘆原が広がり、作者はその風音の中に立っている。この句を一読した時不思議な感覚を覚えるのは、そのほかは、が視覚と聴覚をつないでいるからかもしれないが、それが違和感ではなく心地よい余韻を生んでいるのだ。空の青はまず蘆原の青につながり、そこにただ、葉の音、と言って風を感じさせることで、五五七のリズムとともに秋の爽やかな静けさが広がってゆく。<いい声の物売りがゆく鰯雲><近々と遠くの山の見えて秋>。『裸木』(2013)所収。(今井肖子)




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