January 032015
数へではあら六十や明けの春
小泉洋一
この句が収められている句集の名は『あらっ』(2013)。掲出句からとった、とあとがきにある。「その時の心持ちが素直に詠めたことがうれしかった」とは同じあとがきにある作者の言葉だ。「あら」は、ああ、あな、というある種の感動を表しているが、「あらっ」となると、あらまあびっくり、といった感じがよりにじむ。還暦はやはり一種感慨があるもので、同窓生が集まるとあれこれ話題になる。作者は早生まれ、年が明けて、皆今年還暦だけれど自分は来年よ、と思った瞬間、あ、数え年ならもう六十歳ではないか、と気づいて盃を持つ手が止まったのだ。年が明けることも、干支が一回りすることも、とりあえずめでたい。(今井肖子)
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