March 242015
日のさくら月のさくらと咲きはじむ
鈴木多江子
例年よりやや早いとの予想のなか、南から次々と開花宣言が続いている。これから、北海道釧路の満開予想5月15日まで、日本列島が今年の桜の彩られる。定点観測している近所の桜も、週末にはぎゅっと固くにぎりしめられたような蕾にピンクの嘴のようなほころびが見え始め、あとは日に夜にと咲き継ぐことだろう。朝に開き、一日の終わりにはしぼんでしまう花も多くあるなかで、昼の日差しに咲き、夜の月光に咲く桜はなんと奔放な花なのだろう。その自在さが、まるで日本列島を気ままに北上している旅人の足取りのようにも思えるのだ。桜はそんなことなどちっとも気にすることなく、今年も勝手に咲いて、勝手に散っていくのだろう。『花信』(1990)所収。(土肥あき子)
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