10道県知事選と5政令市長選、41道府県議選など、今日投開票。(哲




2015N412句(前日までの二句を含む)

April 1242015

 奥山の風はさくらの声ならむ

                           飴山 實

を愛でる人は、桜を待ち、桜を見て、桜と別れます。花びらが散り終わったあとの萼(がく)の臙脂(えんじ)に満開の名残を見、葉桜になれば初夏を予感し始めます。中には、一度の別れでは満足できない人も居て、掲句の場合はそうなのかもしれません。平地では桜の盛りが過ぎても、山地に行けばまた桜に出会えます。山の奥の方から風が吹いてきて、それを桜の声なのかと感じています。しかし、強い風ではないようなので、花びらは届いていません。「奥山の風」は、おそらく山桜が放つ匂 いも届けてくれています。桜は見えていなくても、匂いから花の盛りの期待は高まります。「さくら」とひらがな表記しているところにも、やや官能的な匂いの気配を読みとります。なお、句集の配列から見て、「奥山」は吉野山と思われます。『飴山實全句集』(2003)所収。(小笠原高志)


April 1142015

 夕日には染まらぬ花の白さかな

                           長谷川槙子

開花前線は東北地方を北上中、東京は散り時に寒が戻ってやや潔さに欠けている。雨の中近所の公園に行くと、無数の落花が土に還ろうとしながら白く輝いていたが、この句の桜もそんなソメイヨシノだろう。そして、夕日の中にあって夕日の色に染まっているように見えている。しかしさらにじっと見ていると、桜の花の一つ一つが光をはね返し、その白さが際立っていると気付くのだ。自ら光を放っているような花の白、今を咲いて明日には散る桜を見上げつつ、花と心を通わせている作者なのだろう。『槙』(2011)所収。(今井肖子)


April 1042015

 マラケシュに水売る男つばくらめ

                           中島葱男

ラケシュはモロッコ中央部の都市。アトラス山脈のうち最も険しい大アトラス山脈の北に位置し、「南の真珠」と呼ばれてきた。そんな地方に生を受け一生をそこに埋める土着の生活がある。その日その日を糧を得るだけ働き明日の事を考えない。この男も水売りとして何疑う事なく日々を過ごしている。そんな男の傍らを翼を展ばしたつばくらめがすいすいと飛んでいる。そして又明日は旅の鳥となって山脈を越えてゆくのであろう。さて土着と旅と二つの営みの選択をどう選ぼうか。他に<うぶごえはそのみどりごのゆめはじめ><草清水きららの石を積みにけり><月天心まつすぐ跳ねるマサイ族>など。「丘ふみ游俳倶楽部」(2008年号)所載。(藤嶋 務)




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